紙文書のあいさつ言葉は、時候や状況に合わせて選択する。
暗記は不要である。
アレンジは基本を修得してからとする。
相手の人物像や立場、状況などを想定して書く。
失礼のないように、最適な言葉を使用すること。
◎文書の流れ
頭語→時候のあいさつ→定型のあいさつ→概要→本題→結びのあいさつ→結語となる。
◎呼称について
文中で自分側と相手側を区別するために使う。
間違えると失礼なだけでなく、品格を疑われる。
◎呼称早わかり表
対象 | 自分 | 個人 |
個人 | 私 わたし | 貴殿 貴兄 先生 |
複数 | 一同 両名 私ども | ご一同様 各位 |
会社 | 弊社 小社 | 貴社 御社 |
氏名 | 氏名 名 | ご芳名 ご貴名 |
家族 | 私ども 一同 家中 | 皆様 ご一同様 |
両親 | 父母 両親 | ご両親様 お父様 お母様 |
承諾 | 承諾 承る | ご承諾 ご高承 |
授受 | 受領 拝受 | ご査収 お納め |
努力 | 微力 | ご尽力 |
気持ち | 微志 卑志 薄志 | ご高配 ご芳情 ご厚志 |
品物 | 粗品 心ばかりの品 | ご佳品 結構なお品 |
◎頭語と結語
頭語と結語は必ずセット。
文書の種類によって用語が変わる。
頭語は1字分下げずに頭から書く。
結語は必ず文章の最終行とし、行末の1~2字分内側に書く。
◎頭語と結語早わかり表
文章の種類 | 頭 語 | 結 語 |
一般的な文書 | 拝啓 啓上 拝呈 圭白 排白 | 敬具 敬白 不一 拝具 かしこ(女性のみ) |
ていねいな文書 | 謹啓 謹呈 謹白 恭啓 粛啓 | 謹言 謹白 敬白 敬具 |
前文を省く文書 | 前略 冠省 略啓 寸啓 草啓 | 早々 早々 不備 不一 |
急ぎの文書 | 急啓 急白 取り急ぎ | 草々 早々 不備 不一 |
返信の文書 | 拝復 復啓 謹啓 拝誦 謹復御状拝読 | 敬具 拝答 敬答 敬白 草々不一 不備 かしこ(女性のみ) |
再信する文書 | 再啓 再呈 | 敬具 拝具 かしこ(女性のみ) |
◎時候のあいさつ
ビジネス文書では、短い慣用句で十分である。
頭語が「急啓」「拝復」「前略」の場合は、省略してよい。
最近では、年中使える「時下」を使う会社もある。
◎時候のあいさつ早わかり表
暦 | あいさつ文 |
1月 | 寒風の候 初春の候 新春の喜び 酷寒のみぎり |
2月 | 梅鶯の候 春寒の候 立春の候 余寒厳しき折柄 春寒のみぎり |
3月 | 早春の候 春陽の候 春寒次第に緩み 麗白のみぎり |
4月 | 陽春の候 春暖の候 花曇りの昨今 春粧のみぎり |
5月 | 軽署の候 新緑の候 新緑の色増す季節 晩春のみぎり |
6月 | 長雨の候 初夏の候 若葉青葉の候 向暑のみぎり |
7月 | 盛夏の候 猛暑の候 三伏対処の候 炎暑のみぎり |
8月 | 残暑の候 晩夏の候 残暑厳しき折柄 新涼のみぎり |
9月 | 初秋の候 新秋快適の候 爽秋の候 新秋快適のみぎり |
10月 | 秋冷の候 菊花薫る時節 秋涼爽快のみぎり |
11月 | 暮秋の候 晩秋の候 夜寒の折柄 向寒のみぎり |
12月 | 初冬の候 歳晩の候 寒気厳しき折柄 忙月のみぎり |
◎定型のあいさつ
時候のあいさつに続けて書く文章で、相手先の繁栄を祝う言葉である。
決まり文句としては、「貴社ますますご繁栄のこととお喜び申し上げます」「貴店いよいよご発展の由、心からお喜び申し上げます」などがある。
感謝の意を述べる場合は、さらに「格別のご高配を賜り、厚くお礼申し上げます」などの一文を続ける。
◎概要(出だしの一文)
用件導入部分。
「さて」「ところで」などに続ける。
文書の趣旨を的確にとらえ、要領よくまとめる。
以下は、決まり文句である。
「このたびは、ご注文いただき、誠にありがとうございます」
「貴信によるお申し越しの件、お返事申し上げます」
「さっそくですが、先日お問い合わせいただきました件についてご回答申し上げます」
「突然、お手紙を差し上げる非礼をお許しください」
「甚だ申し上げにくいことですが、折り入ってお願い申し上げます」
「先日お貸し出しいたしました〇〇について、本日筆をとらせていただきました」
「このたびの多大なご迷惑をおかけしました件、幾重にもお詫び申し上げます」
◎結びのあいさつ
文書そのものを締めくくる一文である。
内容によって、理解を深める、結果をうながすなどの行為を示唆するものである。
決まり文句は、「まずはとり急ぎ、ご報告申し上げます」「まずは略儀ながら、書面にてごあいさつ申し上げます」「以上、お礼方々お願いまで」「時節柄、ご自愛専一にてご精励くださいますようお願い申し上げます」「本年も倍旧のご支援ご厚情を賜りますようよろしくお願い申し上げます」「ご一同さまのご健康とご多幸を祈りつつ、まずは寒中のお見舞いまで」「ご多忙とは存じますが、ご返事を賜りますようお願い申し上げます」などである。
◎「記」とは何か
ビジネス文書の「記」は、本文とは別に文書の趣旨を箇条書きとしてまとめた部分のこと。
これにより、文意が伝わりやすくなる。
「記」がない文書では、「上記」「下記」とせず、「以下」「次の」「前述の」といった表現にしたほうがよい。
◎詫び状~信頼関係を修復するために~
詫び状は、迅速な連絡や対応をおこなった後に、あらためて書面で謝罪の気持ちを述べる際に作成する。
自社に完全に非がある場合には、定型のあいさつをせず、すぐ本文に入る。
文中には、反省の言葉だけでなく、今後の対策や姿勢を正すことを十分に示すと、こちらの誠意が伝わりやすい。
トラブルもクレームも迅速でていねいな対応をすることにより、信頼関係を回復でき、相手に安心感を抱かせる。
◎詫び状書く際に注意すべき点
- 頭語 相手からの指摘を受けて出す場合、頭語は「拝復」となる
- お詫びの理由 何についてのお詫びなのかを明確に
- 状況に対する対処 なるべく相手の手をわずらわせないような対処法を講じることが大切
- 基本的な対策 同じミスを重ねないために会社としてどう対処しているのか、現状での対応策を具体的に記す。原因が判明している場合は、それを簡潔に示したのち、対策を述べる。
コメントを残す